KELESイブニング・セミナー

6月8日に行われた関西英語教育学会・第18回研究大会のイブニング・セミナーで今井裕之先生(関西大学)とお話しさせていただきました。今回のセミナーのタイトルは,「英語授業における学びを再考する-社会文化的アプローチから-」でした。

前半で今井先生は,小学校英語活動を認知的発達(とりわけ,英語力の伸び)の過程とだけ考えるのではなく,”becoming who you were not”になる過程だと考えようという提案でした。その背景となる理論として,VygotskyがZPDを説明する際に使った”a head taller”というメタファーとNewman & Holzmanが提案するrevolutionary psychology, tool-and-resultの概念をを用いて,小学校英語活動でおこなわれたMomo-taroの授業ビデオでの子どもの変化を分析しました。
私は,「ダイナミック・アセスメント:生徒のパフォーマンスの見立てと将来の発達の可能性への援助」というタイトルの話をしました。今回は,私がDAに向かった背景とDAとは何か,何が問題となっているのかを,これまでの研究を整理する形でお話しさせていただきました。特に,生徒がブレイクダウンを起こしたときに,その先々のパフォーマンスの水準を引き上げるためにどのような援助を与えれば良いのか,を考えました。これは,その生徒のZPDを探ることに他なりませんが,話の中で強調したかったのは,このZPDは,教師と生徒がともに探り合っていくものであること(養育者がベイビーを座らせる例え),また,この探り合いの中で生徒が(一緒に)できたという感覚(a head taller)を活動主体(agent)として感じることが重要なのだということです。だから,DAは,教師の援助に関する枠組みではありますが,教師と生徒がどうやってパフォーマンスを協働制御(co-regulation)し,一緒に発達していくかという問題でもあると考えます(このあたりは,Lantolf & Poehner, 2010に詳しい)。
もう1つの問題として,一人ひとりのZPDを大事にしながらDAを考えたいというのは,どの教師もめざしていることですが,では,それを生徒が40人もいる教室の実践の中で,一体,どう実現するのかという,DAの生態学的妥当性の問題があります。これについては,一人のZPDに他の生徒のZPDを絡ませたり,生徒同士で学びあいの状態を作らせるなど,これから私たちも考えていきたいと思っているイシューです。このあたりのことを夏の全国英語教育学会北海道大会で,DA研のメンバーである荒木美景さんと一緒に発表したいと思っています。
発表で使用したPPTスライドショー(1分ほどに短縮)と配付資料を貼り付けておきます

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