高校生と遊ぶ

タイトルがへんな誤解を生まなければと思いますが,6月上旬に県内のある公立高校に勤務するA先生(本学の卒業生でもあります)のお誘いで,高校1年生の40名の皆さんに授業をしてきました。授業というより,ワークショップです。生徒さんたちは,国際系の学科のみなさんで,これまで毎年,学校の小高連携事業として,近所の小学校に出向いて英語を使った交流をするということを続けています。A先生によると,これまでは,高校生が劇や絵本の読み聞かせを準備し,それを小学生たちに英語を「教える」ということをやっていたそうです。ところが,小学校が教科化したこともあり,高校側も小学生とどのような交流をすれば意味のあるものになるのか迷っており,何かヒントを高校生たちに提示していただけませんか,という依頼でした。

たしかに,英語学習の真っ最中の高校生が小学生に「教え」に行くというのは,どうしたら良いのかよくわからないし,少し前の小学校での英語活動と,最近の外国語活動・外国語科は,内容も雰囲気も違ってきていますから,余計に思案しますよね。そこで,私からは,高校生も楽しめる活動をワークショップで体験し,そこから小学校の子どもたち向けにどうアレンジしたら良いかを考えてもらってはどうか,という提案をしました。何をやったかというと,「インプロ(imporv)」ワークショップです。

私自身のインプロの経験というと,2012年あたりに遡ります。当時,Lois HolzmanさんのVygotsky at Work and Play(邦訳『遊ぶヴィゴツキー: 生成の心理学へ』)の読書会をやったのですが,ちょうど同じ頃にホルツマンさんが日本教育心理学会の招きで来日し,ワークショップをおこなうという知らせをもらいました。そこで,同僚や学生と一緒に参加したのですが,身体の硬かった私が,インプロを経験することは,まさにa head-taller experience(後述)であり,あの頃を起点に自分の中の学びに対する考えが変わった感じがしています。その後,実践家によるインプロのワークショップにちょこちょこ参加しましたが,インプロを体験すると,つくづく体と心と頭はつながっていると思いますよ。

当日は,二コマの時間をもらい,高校生の皆さんといくつかのアクティビティに取り組みました(Count from one to twenty/ Do you like donuts?/ Do you like broccoli ice cream?/ What?というゲーム / Let’s take a photo./ A present for you)などなどです。生徒さんたちに意外と受けていたのは,Do you like broccoli ice cream?でした。これは,YouTubeのSupre Simple Englishで公開されている動画ですが,ありそうにない食べ物のコンビネーションを作っていくというナンセンスな歌です。生徒さんたちには,この歌の替え歌をその場で作ってもらい,即席ステージで披露してもらいました。いろんなものをもまぜまぜするのは,幼い子どもたちだけでなく,高校生も大好きなようです。まぜまぜの行為はcreativeですものね。

最初は,どうなるかなあ,と思いながら進めていきましたが,高校生の皆さんは,予想以上にのってくれて,一緒に場を作って,参加してくれました。そして,一通り活動を終えた後,次のようなスライドを共有しました(やりっぱなしではダメかと思い)。

Did you have fun?

  • Why?
  • Because we played together.
  • “In play, we are a ‘head-taller’ in that we are doing what is beyond us, doing what we do not know how to do.” (Holzman, 2015)

上の引用を使ってしまうあたり,ホルツマンさん頼みが見え見えなのですが,高校生たちに「頭ひとつ分,背が伸びた感じする?」とぶつけてみたところ,「はて?」という反応と「うん,うん」という反応が返ってきました。ワークショップの最初で,「今日の活動では,<やらかしちゃった人><失敗した人>が思いっきり称賛されます」ということを伝えたのですが,成長できたなあと感じた人は,一般的に「失敗」と呼ばれる行為に対する周囲の支えと応援があったからこそだよね,ということ共有しました。そして,次のスライドで,インプロについて少し解説し,終わりました。

インプロ(improv, improvisation)

  • 即興。舞台で演劇をする人たちのワーク。
  • 考え込む前に,動いてしまおう。口に出してみよう。
  • 心と身体を相手とその場に委ねてみよう。
  • Yes, but…ではなく,Yes, andの精神で!
  • 私たちの日常生活は,ほとんどがインプロ。あらかじめ台本などありません。

高校生には,固いお勉強を小学校に持っていくのではなく,柔らかい学びと一緒に成長できる場を作ってもらいたいと思い,企画・実施したワークショップでしたが,さて,この後,実践がどう展開するでしょうか。学校から続報を待ちたいと思います。

生徒の皆さん,先生方,どうもありがとうございました。

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